銀行預金が払い戻せない!

先日父が亡くなりましたが、遺産には不動産が多く、多額の相続税が必要ということになりました。遺産分割協議がまだまとまらないのですが、相続税の支払いが遅れると利子を取られると聞いたので、ではとりあえず父名義の銀行預金を下ろして、それで払ってしまおうということになりました。
ところが、銀行は「遺産分割協議が終わってからでないと払い戻しはできない」と言って、払い戻しをしてくれません。こういうときはどうすればよいのでしょうか。

■ 銀行は相応の理由がなければ払い戻しはしない

相続人の中には、「銀行預金だけ先に分けてしまおう」とか、「とりあえず銀行預金を下ろして、相続税を先に払ってしまおう」などと考える人がしばしばあります。
遺産に不動産が多い場合、評価などに手間取り、遺産分割協議がなかなか整わないためにしびれを切らせるのはよくわかります。

しかし、「とりあえず」で簡単に預金を引き出せることはまずありません。
とは言っても、金融機関に預けてある預貯金は、相続人の間で分け、各相続人は当然の権利に応じて手に入れることのできるものですから、その人を相手に「払い戻さない」は理不尽だという考えには無理はありません。

最高裁は、「預金債権などの金融債権は分けることが可能な債権(可分債権)であるから、相続開始とともに当然分割され、各相続人はその相続分に応じて権利を承継する」と判断しています。

こうなると、よけいにさきのような銀行の対応はけしからんということになりそうですが、銀行にも相応の考えがあります。
単純に相続人だから払い戻してくれと言われても、その人が本当に相続人なのかどうかわかりませんし、相続人が複数いる場合は、あとから別の相続人から、「なぜ私の知らないところでそんなことを許したのか!」と言われてしまうかもしれません。

それに対して、遺産分割協議が紛糾している場合などは、いつまで経っても預金が引き出せないのは現実的に困るわけです。
子のように銀行側と対立し、銀行が任意の払い戻しに応じない場合は、訴訟を起こすしかありません。

■ 相続税の延納金は安くない

「遺産分割協議書」を持ってこなければ預金は払い戻せないと銀行が言ってきているのに対し、遺産分割協議は遅々として進まないという場合、今回のケースのような問題が起きてきます。

しかし、銀行は払い戻さないと言っているわけではなく、あとになって別の権利者が出てきて責任を追及されたら言い訳ができないので、協議が整ってから、としか言いようがないだけです。

それに対して、相続税の申告・納付の期限は容赦なく迫ってきます。
延滞金は多くとも年率十数%で計算されますが、莫大な遺産の1割を超すとなるとばかにできる金額ではありません。

ついには、相続人が自分の預金から相続税を払う羽目になりかねません。
預金が足りなければ払えませんが、相続税には連帯納付義務があるため、相続人の不動産が差し押さえられたりする場合もあります。

■ 遺言書と弁護士

まず、遺言を書けば遺産分割協議は要らなくなります。
その上で、遺言執行者も弁護士をあてれば、預金の払い戻しなど慣れたもので、銀行としても、相続人に押しかけられるよりも弁護士のほうが信用しやすいという事情があります。
相続人としても、法律的なことを相談できるので安心ということになります。

このページの先頭へ