「継がせる」、「あげる」と書かれている遺言は有効か

私は自分で遺言書を書きたいと思っています。法律の専門家に書いてもらうとお金と時間がかかると聞かされましたので、それを避けたい気持ちが強いからです。
その際、「自宅は長男に継がせる」、「預金は長女にあげる」などの平易な言葉で書いても、遺言が有効なものとして扱われますか。

■ 一般的な言葉は意味があいまいと解釈されることがある

結論から言えば、法律用語を使わなければ無効になるとは限らないが、法律用語を使うのが理想的だということになります。

遺言に「(財産を)あげる」と書いたらそれは「相続させる」という意味に決まっているではないかという向きもあるでしょうが、遺言に法的な効力を持たせたいのであればそうした考えだけでは不十分です。

そもそも、遺言は法律に定められた方式で作成する必要があります。
ビデオなどはいけないということは何度か述べたとおりですが、その方式が法になじむものであったとしても、書かれている内容があいまいなものであるとしたら、多少の問題が出てきます。
これは、意味があいまいな表現がすべて無効とされるというわけではなく、個別に判断されるということです。

最高裁は、「遺言の意味内容が不明な場合には、遺言書の文言を形式的に判断するだけでなく、遺言書作成当時の事情および遺言者の置かれていた状況などを考慮して遺言者の真意を探り、遺言を解釈すべきである」としています。
要するに手間が増えてしまうというわけです。

■ 法律用語なら間違いはない

「あげる」を「相続させる」の意味に解釈することは、特別無理のあることではありませんが、「あげる」という言葉には「貸す」や「預ける」の意味も含まれますので、法律的に厳正を期すという立場から見れば、「ちょっと待って」ということになり、さきの「解釈」を行うという行程がさしはさまれてしまうのです。

このケースでは、「長女は父親によく尽くしたようだから、つまり預金を相続させたいんだよ」などと、遺言者や相続人の状況を勘案していくわけです。
「そうに決まっているじゃないか」と考えるのは、よくよくその事情を知っているわずかの人の考えに過ぎません。

結局のところ、「あげる」は「相続させる」と言ったほうがよいということは確かです。

相続人に譲るときは「〔相続人の続柄・氏名〕に〔財産の表示〕を相続させる」と書き、相続人以外の人に譲るときは「〔受遺者の続柄・氏名・住所・生年月日〕に〔財産の表示〕を遺贈する」と書きます。

ここまででも、「遺贈」という一般的には耳慣れない法律用語が出てきました。
「遺贈」を誤って「相続」と書いてしまうと、今度は受遺者を相続人と取り違えてはいないかなどと「解釈」に入られてしまいます。

■ 法律の専門家に払うお金は”死に金”ではない

法律の専門家に頼むと面倒だと考える人があるのは、特に公正証書遺言を勧める弁護士などが多いためだと思われますが、その面倒もお金も、死後の安心のためと思えば、かなりリーズナブルなものだと思います。

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