内容が特定できない遺言

先日父が亡くなり、遺言書が出てきました。遺言書には「四山銀行青坂支店の普通預金を皆で等分しなさい」と書いてありました。ところが、銀行へ行ってみると普通預金は無く、定期預金がありました。この定期預金を「普通預金」と書いてしまったものとしか考えられませんが、法律はこのようなときにはどのように解釈するのでしょうか。こういう遺言は無効なのでしょうか。

■ 言葉を間違えれば無効になる?

遺言に限ったことではありませんが、言葉というもの、自分以外の人間に向かって発せられるものである以上、一義的に特定できるような表現をする必要があります。
修辞的な装飾やなぞかけの類のようなものもありますが、少なくとも法的な文書にはなじまないものです。

その理由も明確にあります。
遺言者がこの世から去って初めて遺言が発効します。
当然に、遺言書に意思を示した本人ではなく、遺言執行者が、その意思を汲み取って行動してくれなければ、遺言は執行されません。
このときに、「普通預金」と書いてあるから普通預金を当たるわけですが、普通預金が無ければ、それ以上は何もできません。
汲み取ってと言っても、「定期預金」と書いていない以上、「同じ銀行の定期預金のことだ」という考えが、正しいという解釈をするには材料が足りません。
実際に、このような遺言を見せても、銀行は定期預金を渡してはくれないはずです。

遺言を書いた本人にしてみれば、ちょっとした勘違い、書き間違いかもしれませんが、預金は下ろせないし、そもそもその遺言は有効か否か、解釈をめぐって相続人間で争いが起こらないとも限りません。

■ 遺言の解釈

遺言執行者は、遺言に書かれた内容に対し、できるだけ適法有効な解釈を試みますが、何と言っても既にいない人が書いたものですから、遺言者に確認することだけはどうしてもできません。
そうなるといきおい、遺言書のほかの部分や、遺言書が書かれた当時の状況から判断するしかありません。

実際に、定期預金を「普通預金」と書き間違えた遺言が裁判にまで持ち込まれた例があります。
この事案では、定期預金が全財産であったこと、預金の管理は一人の子が行っていて、遺言者はそれが定期預金か普通預金かにあまり関心がなかったこと、などの事情にかんがみて、当該預金は定期預金のことであるという判決が出ています。

この判決を持ち込めば、銀行は定期預金を払い出します。
が、そうでないかぎり、銀行名が誤っているのか預金の種別が誤っているのか、それとも両方誤っているのか誰も判断できません。

■ 遺言は専門家と一緒に作る

そうは言っても、人間ですから誤りはあります。
そんなとき、法律の専門家に遺言書の作成を手伝ってもらうようにすれば、例えば弁護士は、遺言者の言うことを鵜呑みにはせず、銀行預金ならば通帳を見ながらなど正確を期しながら、また遺言者の言葉を適法有効な言葉に置き換えてくれたりもします。
思いがけない上手い言い回しを知っていたりもします。

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