継続中の訴訟がある場合

■ 相続人が引き継がなければならない裁判

被相続人が生前、争っていた裁判がある場合があります。
裁判が終わっていれば当然に問題はありませんが、継続中に相手方がいなくなるになるのですから、生きている相手方は困ってしまいます。
もっとも、相手方が「困る」のは、普通、被相続人のほうが相手方から損害賠償などを求められている場合です。
ですから、被相続人のほうが賠償を求める裁判の場合は、相手方は喜ぶことになるでしょう。

いずれの場合も等しく不合理であるため、裁判を争っている双方のいずれからも、裁判所に対し「訴訟手続の受継申立て」を行い、、亡くなった相手方の相続人を引き出すことができるようになっています。
双方のいずれからもこの申立てが無い場合でも、裁判所が相続人に訴訟手続の受継を命じることもあります。

そもそも裁判というもの、容易な行為ではありません。
相当の理由があって起こされた訴訟において、現実問題として、多大なる時間と費用を費やしてきた裁判が、一方の死によって無に帰してしまうということは、あってはならないというのが法律の立場です。

■ 相続人が引き継がない裁判

例えば、被相続人が生前に争っていた離婚訴訟などは、相続人が引き継ぐ意味がありませんので、こうした裁判は引き継がれません。
また、被相続人が刑事犯として訴えられている裁判で。犯罪の当事者でない相続人が引き出されることはありえません。

■ 裁判の存在を遺言する意義

裁判は財産ではありませんから、遺言にはなじまないと考える人もあるようですが、これは誤りです。
そもそも、金銭などを要求していた裁判があるのであれば、継続することで相手方から当該金銭などを受け取るのは相続人ですから、裁判の引き継ぎは相続人にとってもメリットがある場合があります。

ただし、冒頭の考えが誤りであると言う根拠はそのことではなく、遺言は文字通り、遺言者が遺す言葉ですから、なにも財産に関すること以外を書いてはいけないということはないからです。

遺言者の立場に立ってみれば、自分が訴えられていた裁判にせよ相手を訴えていた裁判にせよ、自分が死ぬ以上相続人が引き継がなければならない裁判があるということを、自分の手で伝えたいと思うはずです。
訴えるにせよ訴えられるにせよ、裁判という行為は容易なものではありませんし、時間、労力に加え弁護士費用などもかかりますから、遺言者としてはそれを引き継ぐ相続人に詫びたい気持ちもあり、それを伝えたいとも思うのではないでしょうか。

裁判の引き継ぎを遺言する場合は、遺言の中でも法的効力を発する内容である「遺言事項」に対して、遺言者の心からのメッセージに相当する「付言事項」に盛り込むのが普通です。
付言事項は相続人を法的に拘束するものではありませんが、裁判の引き継ぎについては相続人にはそもそも拒否する権利はありませんので、せめて心をこめてそういう現実があることを伝えることは、十分に意味のあることではないでしょうか。

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