遺産の内容を把握している人がいない場合

■ 財産が多いと、相続人がすべてを知ることは困難

遺言をしたほうがよい、しなければならないケースとして、「法定相続に従った分割に対して、被相続人が不満や不安を持っている場合」というのは、遺言に関する基礎知識の一つと言えます。
では、「法定相続のとおりに相続が行われれば問題はない」と考える場合は遺言は必要ないと考えてよいものでしょうか。

一般的にはそのとおりかもしれませんが、遺産が多く、相続人もその内容を把握していないとか、一部は把握しているが全部知っているかと訊かれると不安があるなどの場合は、財産の全部について、あたかも財産目録のような風情でもって、遺言書として書き表すということには、ひじょうに重要な意義があります。

現実に目を向けてみますと、あちこちに不動産を所有し、また複数の銀行に預金口座があり、貸金庫には株券と宝石類、さらには債権(貸金)が複数あるという人は実際にいます。
こういう人の場合は、相応の努力をしないと、自分の所有する財産のすべてを把握することは難しいことさえあります。

ただこういう人は、相続のことを考えればこそ、自分の財産がどこにどのような形で存在するかを、自分の死後相続人が正確に知ることができるように努力していることもよくあります。
が、やはり漏れという物はありえるのです。

漏れがあって、遺産を分けた後で新たに知らない遺産が出てきたなどというケースでは、遺産の分割をやり直さねばならなくなる場合があります。

■ 相続は時間との戦いという側面もある

いかに膨大な財産を持っているとしても、負債が無いとは限りません。
万一、負債のほうが資産よりも多いとなると、相続人としてはもらえるどころか取られる羽目になりますので、相続が生じてから3ヶ月以内に「相続放棄」の届出をしなければなりません。

しかし、相続人が財産の全容を知らない状態では、それを知るのに3ヶ月を超える時間を要し、その結果負債ばかりを負うことになるとしたら、これほどの嫌な出来事はそう無いでしょう。

また、相続税は、相続が生じてから10ヶ月以内に納めなければなりませんが、やはり財産の把握に時間を取られ、この期限を過ごしてしまった場合は、減額の特例を受けられないなどのデメリットが生じます。

そもそも、財産の全貌がわからず専門家に調査してもらうような場合、当然に費用がかかりますし相応の時間を要しますので、上記のような期限をも過ごし、余計にやきもきし嫌な気分になることは、被相続人の責任において回避したいものです。

■ 死ぬまでに財産は変動するかもしれない

遺言書を亡くなる日の直前に書くことはあまりないでしょうから、財産が多い場合は、遺言書を作成してから相続が生じるまでの間に増えたり減ったり、また財産の項目が増えたりする可能性があります。

このようなことを見越して、遺言書に無い財産も含めるなどを追記しておくのも一つのコツです。
ただし、財産に変動があった場合は、都度遺言書に変更を加えるのが原則的なやり方と心得ましょう。

このページの先頭へ