遺産の評価が困難な場合

■ 遺産は時価で評価される

遺言が無い相続の場合、あらゆる財産は、「お金にしていくらの価値か」という評価を受けることになります。
預貯金などの現金は、当然にその額面どおりの評価となりますが、不動産、車両、株式、貴金属などは、その評価額を決めなければなりません。

ところが、「時価」の基準時を定めるに当たって意見が分かれるとか、評価の方法が2通り以上ある場合はこれも争いの元となります。
特に非上場株式や、海外にある資産の評価は難しい場合が多く、徹底的に争うとなれば専門の鑑定士などを呼び、多くの時間と費用が必要になるでしょう。

■ 遺産分割協議がまとまらないと事業継続に支障が出やすい

遺産の分割が決まらないと、相続されるべき財産はすべて相続人の共有財産となります。

そこで、被相続人が農業を営んでいた農地や被相続人の経営していた会社の株式の場合、共有ということは全員の意見が一致したことしか実行できないため、事業の円滑な継続には支障をきたしやすくなります。

例えば、ある一人の相続人が承継すべき株式会社の経営において、相続人全員が議決権を有するため、承継者たるべき人の意見が通らないことも予想されます。
さらには、船頭多くしてとんでもない方向に進むとか、決定すべきことが決定できず事業そのものが頓挫することにもなりかねません。

遺産分割の決定の遅れは、単に所有者が決まらないというだけの問題では済まない場合もあるということになります。

■ 事業承継は遺言で明確に定める

オーナー会社の事業承継については、事業用資産も事業の維持にはひじょうに重要ですが、殊に自社株式については、その全部を承継者に相続させる旨遺言しておけば確実です。
つまり、株式の分散により事業継続に支障が出る可能性はなくなります。

この際にも、事業承継者以外の相続人に遺留分には注意しましょう。
事業承継を念頭において承継者に必要な財産を与えたとして、そのほかの相続人の遺留分が侵害されないか、という点です。

遺留分と言っても、おおむね不公平がなければ、上述のような鑑定士を呼んで厳正に評価額を算出してとまでの事態には至らないでしょうから、事業承継者以外の相続人には、事業継続とあまり関係のない財産を多めに与えるように遺言するなどで十分でしょう。

見方を変えれば、面倒で時間のかかる「遺産の評価」という手続を回避するという意義をも、遺言は持っているのです。
例えば、ひとくちに住宅を相続したと言っても、厳密に評価すれば物件によってその評価額に違いは出るでしょうが、実用面で大きな差異がなければ、たいていの人は納得するものです。
株券なども同様で、時間の経過と共に評価額は変動するのですから、将来の換金時にいくらになるかを考えても仕方ないと思うのが普通でしょう。

なお、遺留分減殺請求がなされたとしても、株式は渡さず金融資産でまかなうなど工夫すれば、株式議決権は侵害されず、事業に影響は出ません。

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