遺言の付言事項と補充遺言

■ 「付言事項」の意義

付言事項とは、平たく言えば遺言内容に対する補足説明です。
補足説明の中でも、遺言者の感情や考えといった類の、言ってみればかしこまらない本音とでも言うべき内容が「付言事項」に相当します。

遺言の中で、ただ「預金は長男に相続させる」とか「土地は妻に相続させる」とか、「奨学基金に寄付する」など、必要最低限のことしか書いていない場合、それを見た相続人が、なぜそんなことをするのかわからない、などと感じてしまう可能性があります。
事前の話し合いなどの中で遺言者の真意をすべての相続人が理解していれば最も理想的かもしれませんが、顔を合わせて話すほうが真意が伝わるとも言い切れませんし、そもそも話し合いが不可能な場合もあるでしょう。

そもそも、遺言は、遺族に対して良かれと思ってその内容を決めるものですから、最終的にその真意が伝わらず誤解されるようなことがあっては台無しになります。
そこで、付言事項として、「長男は家業である農業に長年助力尽力してくれ、それに対し他のきょうだいには農業ができるとは思えないから、家業を絶やさないということと、長男の生活の基盤としての農業を継続させるためと、ほかの者は生活の糧を得るすべをすでに確保しているということにかんがみて、農地以外にこれといった財産もない我が家のこと、遺留分を含めすべて長男に譲ることをどうか承諾してほしい」というように書けば、改めて遺言者の家業に対する思いや、長男の頑張りなどに大して評価する機会を得るわけです。

寄付をするという遺言に対して、付言事項として、「おまえたちには、生前は十二分に財産を与えたし、面倒も見た。そのおかげもあっておまえたちは現在、家族ともども人並み以上の生活ができている。ついては、さらに残った私の財産は、恵まれない人に使ってもらいたいという私の思いを理解してほしい」などと書いておけば、相続人の義侠心も奮い立たせようというものでしょう。
特に負担を強いられるわけでもなく、安穏な気持ちで遺言を受け入れればよいことなのですから。

要するに、遺言を読んだ相続人が、「私のことを嫌いだったのか」などと誤解しないように、ということになります。
人間社会のコミュニケーション術の基本を踏襲したのが、「遺言の付言事項」の意義と言えます。

なお、遺留分を放棄してくれなどの遺言内容は無効とはなりません。
ただし、それをおして減殺請求をする相続人の権利を制限するものでもまたありません。

■「補充遺言」は、遺言者よりも相続人が先に亡くなった場合の担保条項

高齢の配偶者などの場合、遺言者よりも先に逝く可能性はあります。
さらに、相続ならば代襲もありえますが、遺贈の場合はいわゆる他人や遠縁の人となるため、遺贈自体が無効になってしまいます。

例えば甥に遺贈を決めた場合に、「甥が亡くなっているときは甥の長男に」というように、第2順位の人を定めておくその内容を指して「補充遺言」と言います。

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