事業全部を特定の人に承継させたい場合

■ 「事業承継」の対策

オーナー経営者にとって、事業の承継はひじょうに重要な課題です。
法定相続のルールに従う場合、あらゆる財産は相続人に分割して与えられますが、例えば長男や奥さんに事業を継がせたい場合は、法定相続に従って分割されると事業が維持できなるケースも多々あります。

そこで、そうならないように遺言で財産の分け方を具体的に指定する必要があるわけですが、その前に、経営者は経営者として自身の死後も事業が継続できるよう、生前に事業承継の対策を練っておく必要があります。

具体的には、まず事業の後継者を早めに決めることです。
その上で、生前贈与できるものはしてしまい、加えて、事業用資産を後継者に相続させる旨の遺言をしたためればよいのです。

失敗のない事業承継対策のためには、弁護士や税理士に相談することも重要です。

■ 事業承継における遺言の活用

ポイントは以下の4つがあります。

1. 公正証書遺言にする
自筆証書遺言よりも信頼性が高く、弁護士や公証人によるチェックも入るため失敗が起きにくい利点があります。

2. 遺言執行者を必ず指定する
遺言執行者は信頼のおける弁護士などの専門家を指定します。
遺言執行者に相続人を指定しますと、利害関係のただ中にある人であるだけに、無用な横槍や悶着が生じるおそれがあります。

3. 事業承継者以外の相続人の遺留分に留意する
事業の全部を事業承継者に相続させるのは良いとして、事業資産以外の財産は、そのほかの相続人に与える旨、遺言書に併記します。
もし、事業承継者の相続分がほかの相続人の遺留分を侵害するようなことがあれば、それを返却しなければならなくなる可能性があります。
そのことにより、遺言時の事業承継の計画が変更を余儀なくされ、最悪の場合廃業せざるを得なくなる可能性もあります。

4. 事業承継者の納税資金にも配慮する
株式や事業用不動産の相続では、相続税が高額になりがちです。
”相続貧乏”に陥り事業の継続が困難になることがないよう、なるべく預貯金などの現金を相続させるとか、相続の対象とならない生命保険金を与えるような配慮が必要です。

遺言書文例

                   遺言書

遺言者山田太郎は、次のとおり遺言する。
一、遺言者名義の次の不動産を長男山田慎一に相続させる。
  1.〔土地の表示〕
  2.〔建物の表示〕
ニ、遺言者名義の以下の預貯金を長男山田慎一に相続させる。   1. 四山銀行青坂支店 普通口座 口座番号1234567
三、遺言者が所有する未来産業株式会社の株式の全部を、長男山田慎一に相続させる。
四、以上に定める財産以外のすべての財産を、次男山田清二に相続させる。
五、この遺言の執行者として、弁護士川端克彦(住所、生年月日)を指定する。
六、遺言者は、遺言執行者川端克彦に対して、本遺言執行のための預貯金等にかかる名義変更、解約および払戻をする権限ならびに遺言者名義の貸金庫を開扉または解約し内容物を取り出す権限を授与する。
なお、以上の手続をするについては相続人の同意を必要としない。

以下略

このページの先頭へ