分割したくない財産がある場合

■ 農地は分割してしまうと維持ができなくなる

何もかもが決められた数字で分割されてしまうのが法定相続の規定です。
そうして分割される財産が預金や株券ならば問題ないのですが、家屋や農地などは、ひとまとまりになっていて初めて価値があるものです。

もともと分割する前提で設計されていれば良いのですが、通常はそういうことはしないので、「一軒の家を平等に二分する」といった場合、住まいとしての実用性を失う可能性があります。
そうなればいきおい、売却してその代金を分けようということになりかねません。
家を換金したら住む所がなくなるような場合、合理性を欠き、相続によって不幸になる人が出てきます。

農地の場合はもっとシビアで、通常、農業を営むには一定以上の広さの農地が必要となり、きわめて広大な農地がある場合は別として、広すぎない農地が二つ、三つに分割された場合、農業を営むことができなくなります。

もちろん、2人ないし3人が互いの農地を共有地として維持していけば問題はありませんが、所有者がめいめいに、あくまでも自分のものだから自分の自由にしたいなど言い出せば、実際には農地の全部を売却して換金するしかなくなります。

そもそも、ここには二つの問題がからんでくる可能性があります。
第一に、被相続人は農業を続けてほしいと思うのではないかということです。
第二に、農業を継ぎ維持するということは容易なことではなく、農地をもらった相続人がそろって農業ができると喜ぶということは考えにくいということです。
つまり、例えば長男一人が農地の全部と家業としての農業を継ぐということになるのが自然なのではないでしょうか。

要するに、「農地の全部は長男が継ぎ、家業も長男が継ぐ」という内容の遺言が必要となるわけです。

■ 公平性への配慮を

遺言書に、長男が農地の全部を相続する旨を明記したとしても、その資産価値は相当のものになるので、ほかの相続人との間に不公平が生じないように配慮することも大切です。

「農地は全部長男のものになるが、残る財産は残りの相続人の間で適当にやれ」と言うのでは不安が残ります。
具体的には、誰々には何々と、全ての相続人に対して、相続させる財産を遺言書に明記すべきです。

つまり、相続人の遺留分に応じた相応の財産を指定してあげるべきということになります。
ただし、「家業の維持」を最優先に考える場合で、特に農地以外にはこれといったまとまった財産が無いとなりますと、長男以外の相続人が遮二無二遺留分減殺請求をしたりして、結局農地を売却せざるを得なくなる可能性もあります。

農業を維持するということを最優先に考えると、どうしても財産の分け方に不公平が生じてしまいそうな場合は、生前にできる限りの譲歩、承諾を、全ての相続人から取りつけるほうが無難かもしれません。
いちばん嫌な思いをしたのが長男、などということにでもなれば、家業を継いだ喜びもやる気も半減してしまうことになりかねないからです。

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