慈善事業などに寄付したい

■ 遺贈により寄付は可能

「子孫に美田を残さず」とか。
遺産をむしろ公のために使ってもらいたいと考える人は少なくないようです。
相続人にとっては冷淡なように思えるかもしれませんが、苦労しないで得た金は不幸を呼ぶとも言われ、財産を持っている人であればあるほど金に対する確固たる哲学を持っていたりします。

また、単純に相続人の素行がおしなべて悪く、被相続人が相続人に遺産を渡したくないと考える場合もあります。

そこで、「遺産は恵まれない子らのための奨学金にしてほしい」、「世話になった母校に寄付したい」、「食べ物もろくにないような国に送ってほしい」などの希望は、しかるべき団体等に遺贈することで叶います。

■ 注意点

1.遺留分の侵害に注意
「遺産など不幸の種」、「人間が駄目になる」などと考え、親の遺産などあてにするなとばかり全額を寄付。
潔いとは言えそうですが、民法は配偶者と子、または直系尊属に「遺留分」を規定しています。
もともとは配偶者との共同財産という見方や嫡子の承継という伝統的慣習に根ざす規定であり、「遺産などわずかでも与えたら甘えてしまう」という考えは含まれていないものですから、仕方ありません。

相続人の遺留分は遺産の総額から一定の割合で算出されるものですから、この遺留分は残した上で、それ以下の額を寄付する分には問題になりません。
遺留分を侵害するような額を寄付してしまった場合は、相続人による「遺留分減殺請求」によって、寄付を受けた団体等がその分を返却することになる場合があります。

こうしたトラブルが起きるとすれば、結果は遺言者の意思に反したものとなり、遺贈を受けた団体にもかえって迷惑をかけるおそれがあります。

したがって、遺留分の計算は、冷静に行いたいものです。
もっとも、相続人が遺言者の意思を十分に理解して、遺留分の放棄をしてくれる場合はこの限りではありません。

2.寄付の受け入れ先にもあらかじめ打診を
ただくれるものを拒む者はいまいと思っても、寄付を受けるほうには規則もあり事情もあります。
例えば、現金は受け入れるが不動産は困るとか、受け入れるけれども使途は指定されても困るなど、団体によって細かい規定がある場合があります。

結果として受け入れてもらえなければ、遺言者の意思は実現されませんし、無用のいざこざを生むことにもなりかねません。

遺言者は、何をどこへ寄付して、何に使ってもらいたいかを遺言書に書く際には、専門家である弁護士のアドバイスをもらいつつ、寄付を受ける側へも相談して、あらかじめすり合わせを行っておくことが必要と言うことができます。

遺言書文例

                   遺言書

遺言者山田太郎は、次のとおり遺言する。
一、遺言者は、わが母校学校法人青坂学園(住所)に、現金1億円を遺贈します。
二、青坂学園は、当該1億円がなくなるまで、同学園がふさわしいと認める生徒に奨学金として与えてください。
三、遺言執行者として、弁護士川辺龍平(住所、生年月日)を指定します。

平成25年5月25日
東京都港区青坂8丁目7番6号          遺言者 山田太郎 印

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