遺言の年齢制限

未成年者の行為は法律上の権利・義務を伴わない

遺言と言えば、財産に関することという連想ができます。
遺言によって財産はどうなるかと考えた場合、所有者が変わる、売却されるなどと言うことができます。
このような行為すなわち財産の処分行為は、通常、未成年は単独では行えず、例えば民法では、物品の売買において、未成年者がこれを行うときは親権者の同意が必要と定めています。

さて、子どもが自分の小遣いでお菓子などを買うとき、いちいち親権者の同意を取ることはしませんが、この場合の小遣いは、あらかじめ親権者が処分を許した財産とみなされるのです。

少々難しい言い回しにならざるを得ないのですが、人がその行為に法律的な効力を発生させるためには、その行為の結果を判断できる意思能力があることが求められます。
裏を返せば、自らの行為によって結果的に自分がどんな権利を得、どんな義務を負うのかを十分に理解できない人は、物品お売買を行ったとしてもなんらの権利、義務は発生しないという考え方に立つのが民法の規定です。

このことは、「各個人は、原則として自己の意思に基づいてのみ権利を取得し、または義務を負担する」という近代法の原理に基づく考え方です。

つまり法律は、未成年者をひとくくりにして、全員が「制限能力者」すなわち一人前の大人の意思能力を持っていない人と想定しているのです。
それは多くの場合事実で、年齢が低ければ低いほど意思能力は低いと言えます。

そして民法は、未成年者の行為に法律上の効力を発生させるためには、原則として親権者の同意が必要と定め、未成年者の保護を図っているのです。

■ 15歳以上ならば遺言ができる

ところが、同じ民法は、15歳以上であれば遺言をすることができる旨を規定しています。
つまり、15歳未満の人が遺言をしても無効ですが、15歳以上の人は、親権者の同意を待たずに有効な遺言をすることができます。

さきに述べたとおり、物の売買と遺言は「取引行為」という点で類似性があるにもかかわらず、なぜ遺言だけは「20歳以上」ではないのでしょう。
まぎれもなく、20歳未満の人の遺言が法的に有効ということは、その遺言は法律上の効力を発生させることになります。

ところが、遺言は遺言者の死後に効力を発生するため、「未成年者の保護」という配慮が不要だからなのです。
法律は生きている人間のためのものであって、死んだ人には権利も義務ももともと発生しません。

また、人間の尊厳を謳うわが国の憲法を見ても、法律は基本的には、年齢にかかわらず人間の最終意志を尊重しているからだと言うこともできるでしょう。

ただし、無論のこと、未成年者が遺言書を書くというケースはきわめてまれです。

■ 遺言書を親が代筆することはできない

通常であれば、子どもがある財産を処分しようとする際には、親権者がそれを代理しますが、遺言の場合はまったくの例外で、親が代理で書いた子の遺言書は無効となります。
子どもであろうと、最終意思を尊重するという考えに立つ規定です。

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