親族以外の第三者に遺産を譲りたいとき

■ 血のつながらない人へ遺産を譲るのが遺贈の本領

人間同士の関係は、ときに複雑怪奇なものかもしれません。
遺言者は、年老いて介護が必要にもかかわらず、肉親はあまり面倒を見てくれない。世間によくあるケースです。
ところが、たまたま仕事としてヘルパーをやってくれた人との間に、長年世話し世話される間に肉親以上の信頼関係、むしろ愛し愛される麗しい関係が築かれる。これもまたよくあることです。

また、内縁の妻と言われる立場の人には、本妻がいるにもかかわらずそういう人がいるのには相応の理由があり、本妻以上に信頼しまた世話にもなり、愛してもいるという関係、これも世間に間々見られる光景です。

遺言者と血のつながらない人への財産の承継は、法定相続の理念の範疇にないため、こんなときこそ遺言書を書きたいものです。

長年世話をしてくれたお礼として、ヘルパーさんに〇〇の土地を遺贈する(特定遺贈)とか、内縁の妻に財産の〇分の1を遺贈する(包括遺贈)とか、法定相続人でない血族への遺贈と同じく2種類の方法で遺贈することができます。

■ 「特別縁故者への財産分与」

故人に相続人が無いか、明らかでない場合、その遺産は国庫へ納められます。
しかし、国庫へ納められる前に、「特別縁故者」、例えば内縁関係にある夫または妻、職務の域を超えて献身した付添看護師などに遺産を与える「特別縁故者への財産分与」の制度があります。

ただし、この制度は相続人がいる場合には適用されませんから、その場合にはやはり遺言書に遺贈を明記する必要があります。

■ 介護と「寄与分」

さて、言うまでもなく、法定相続人が被相続人を熱心に介護するケースとて少ないわけではありません。
子が親の面倒を見る、妻が夫の世話をするのは当たり前のことですが、遺産分配においては、被相続人に対しての介護や世話といった行為が、それをした人への財産分与において有利に働く場合があります。
それが「寄与」という概念です。

被相続人に対しての療養看護は、被相続人の財産の維持または増加について特別な寄与をした限度において、「寄与分」として特別の配慮がなされることがあります。

ただし、包括遺贈を受けた相続人には寄与分は適用されず、寄与分が適用されうるのは共同相続人に限られます。
したがって、共同相続人にはもともとなりえないヘルパーさんや内縁関係の人に寄与分は認められません。

このことからも、故人と血のつながらない縁故者、貢献者への遺贈については、遺言書でその旨を指定する必要があります。

遺言書文例
上:内縁の妻への遺贈 下:世話になった人への遺贈

                    遺言書
遺言者山田太郎は、次のとおり遺言する。
一、遺言者は、内縁の妻である豊田京子(住所、生年月日)に遺言者の所有する一切の財産を包括して遺贈する。

以下略
遺言者山田太郎は、次のとおり遺言する。
一、遺言者は、親身に遺言者の介護をしてくれたお礼として、長年の友人である川辺由美子(住所、生年月日)に遺言者の所有する全ての財産を遺贈する。

以下略

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